足もとの自然から始めよう【書評】

グリーン関連のおすすめ本

夏休み真っ盛りですね!この時期は暑いし雨もほとんど降らないので大変なこともありますが、「夏休み子ども科学電話相談(NHKラジオ第1)」を聴きながら、子どもの素朴な疑問に癒されつつ仕事をするのはけっこう楽しいです。

登場する子どもは宇宙や恐竜、虫や動物といった自然に興味があって、ときには結構するどい質問もするので驚かされることもあるほど。子どもの興味って面白いですよね。でも、大人になるにつれて虫や生き物が嫌いになったり、自分の子どもは虫が大好きだけど自分は見るのもいやだという親御さんも結構多いのではないでしょうか?

子どもの興味は大事にしてあげたいけど、大人として、親として、子どもと一緒にどのように自然と接するのがよいのか悩むこともあると思います。

今回紹介するのはそんな方におすすめの本。わざわざ遠く離れた大層な自然環境に子どもを連れていったり、自由研究で世界の環境破壊を学ばせたりといったことに意気込まなくても大丈夫だとわかって安心できると思いますよ。

地球を守れというまえに

本書は、米国ニューイングランド・アンティオーク大学で環境教育を研究している教授で著者のデイビット・ソルベさんが、昨今の熱心な環境教育について、子どもがまだ小さいにも関わらず、地球規模の環境問題の恐ろしさや、将来の責任を押し付けることが授業の大半になってしまっていて、それが逆に子どもを大地から引き離してしまっているのではないか、という疑問から始まります。

子供が把握できる行動範囲は、成長にともなって、親の周り、家、家が見える周辺、地域……そして世界、といったようにだんだんと広がっていきます。しかし、その成長過程を待たずに世界規模の環境問題について学んだとき、まだそのような抽象的な事柄を考える力が育っていないために、たとえば「森林破壊をするブルドーザーはダメだ」といったような二項対立のような簡略化しすぎた答えに達してしまいがちになるとのこと。

 

早すぎる抽象化

また、こうした「早すぎる抽象化」は子供を自然嫌いにしてしまうという大きな問題を抱えていると著者はいいます。数学をイメージするとわかりやすいのですが、小学3、4年生の段階で日常からかけ離れすぎた符号や記号を使った算数の授業が始まったときに、突然、訳がわからなくなって次第に苦手意識が生まれ、中学高校では数学から離れてしまうということがありますよね。これと同じことが自然環境に対しても起きてしまうということでした。

 

高知識の低行動

ちなみに本書を翻訳した岸由二さんは僕が学生時代から尊敬する1人で、環境を知るうえで「流域圏」の大切さと、それの考えをもとにした都市計画の重要性など伝えている方です。彼自身の、大学キャンパス内の森の回復や鶴見川流域の保全などの活動を主導してきた経験のなかで、このような活動に積極的に参加してくれる学生は、1000人に1人、継続してくれるのは1万人に1人くらいで、参加するのは共通して生き物が好き、森で過ごす時間が快適だと感じている学生。さらにいえば、社会的に環境教育を熱心にしてきたにもかかわらずその参加人数は減りつつあって、本書にあるような早期の抽象化や知識に偏った体験をともなわない教育による、「高知識ゆえの低行動もしくは非行動」という結果を身をもって語っています。

 

知ることと感じることのバランス

著者は「環境活動にかかわっていく本物の姿勢というものは、まず自分で管理できる狭い場所での、生の経験から生まれるもの」として、焦らずいそがず、子どもの成長とともに、ゆっくり自然と交わりたのしむことが大事だと語っています。地球環境の悲惨さを伝えるまえに、足もとの自然から知識と体験を広げていくことの重要性を教えてくれる良書でした。

足もとの自然から始めよう