サピエンス全史【書評】

グリーン関連のおすすめ本

 

農業に多少でも興味がでてくると、調べていくうちにいろんな意見や思想に出くわしたり、ささいな意見の対立なんかを見てしまったりして、せっかく興味を持ったのに気分が重くなってなんだかなぁ…と思ってしまったことってありませんか?

うちの畑でも、無農薬・無肥料・不耕起で植物を育てていこうとスタートを切るまでにはそんなことがありました。

本書は農業だけに限った内容ではありませんが、そんなモヤモヤした気持ちをスカッとすっ飛ばしてくれる爽快な1冊です。なにせ「農業革命は史上最大の詐欺」といってしまうほどですからね、農業のイメージを良い意味で壊してくれる衝撃があると思いますよ。

  

本書の全体の流れは、現生人類(ホモ・サピエンス)の全歴史を、認知革命、農業革命、科学革命という3つの革命を通して学術的な裏付けをしつつもスリル感たっぷりに語っています。

とくに農業革命の章でおもしろかったところを引用すると、

例えば、「化石化した骨格を調べると、古代の狩猟採集民は子孫の農耕民よりも、飢えたり栄養不良になったりすることが少なく、一般に背が高くて健康だったことがわかる」とのこと。

人類のスタートがだいたい250万年前なのに対して、農業の歴史はたった約1万年前からで、もともと人類は農業をしているよりずっと長い期間、狩猟採集をして過ごしてきた雑食性の霊長類でした。なので、農耕を始めたことによる偏った食生活や、人口密度の高い集団生活などの結果、狩猟採集をしていたときと比べて病気や栄養不良が急激に増えたそうです。

 

また、「平均的なサピエンスの脳の大きさは、狩猟採集時代以降、じつは縮小したという証拠がある」とし、狩猟採集社会では、一人ひとりが生き延びるために膨大な知識と能力を発揮することができていたし、そうやって生活していたときは、農耕社会と比べて働く時間も少なくて済んでいたようで、寿命も長かったようです。

だからどうってことではないのですが、農耕が人類に幸せをもたらしたかというと、必ずしもそうではないことを知ることができてとても楽しいです。今の食生活を見つめなおすきっかけにもなりますしね。

 

ちなみに、著者のユヴァル・ノア・ハラリは1976年イスラエルにあるヘブライ大学の教授で歴史学者で、youtubeでの無料講義はヘブライ語ですが世界的な人気となっています。

 

この著者の考えで面白かったのは、「歴史書のほとんどは、歴史的な事実として語れることが、各人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたのかについては、何一つ言及していない」として、これを「人類の歴史理解にとって最大の欠陥と言える」といっている点で、「幸せとはなにか」という問いについても冷静に様々な角度から考えを提示してくれています。

 

農業だけにかぎらず、このような俯瞰的、長期的な視点を共有することは、対立したり凝り固まった問題を柔らかく解きほぐしてくれる力になると思いました。

本書は上下巻にわかれている長編ですが、ぜひたくさんの人に読んで欲しい一冊でした!

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福