小規模農業の役割
2017年の年末に国連から、2019年から2028年までの10年間を「家族農業の10年」とすることが決定したとの発表があったように、世界的に小規模・家族農業が重要視されるようになってきました。
小規模・家族農業は、大規模農業とくらべて、
- 多品目を栽培することによる安定した生産
- 労働の調整役
- 環境への低影響や持続可能性
などのメリットがあるものの、まだまだその良さを伝えきれてない、伝わっていないということがありそうです。
そもそも小規模・家族農業ってなに?
次の映像は、フランス・モンペリエの農業大学院大学の学生が中心となって作ったドキュメンタリー映画で、そもそも小規模・家族農業とはどういうものかを知るには良い作品です。
【タイトル】Those who sow(邦題:未来を耕す人びと)
【制作】アグロサッカド
【監督】ピエール・フロマンタン
【日本語字幕制作】小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン(SFFNJ)
【映画】Those who sowの感想
映像については、べき論も多いので、見る人によってはしんどいかもしれませんが、僕がこの映像を見ていちばん気になったのが「商品のスペックは伝えているが、その商品をつくることの価値は伝えられていない」ということについて。
最初にも挙げたとおり、小規模・家族農業には、
- 多品目を栽培することによる安定した生産
- 労働の調整役
- 環境への低影響や持続可能性
など、いろいろ良い面もあるのですが、市場を通すと上記に挙げたような利点が反映されにくく、大規模(資本主義的・モノカルチャーなど)農業との価格面のみでの直接競争には勝てません。なので、小規模・家族農業が生き残っていくためには消費者と直接つながることや、それを支えるシステムづくりが大切なことの1つであることは間違いありません。
消費者と生産者のあいだの壁
でも、そのときの問題として、生産物のスペックについては説明されていても、バックグラウンドに背負っている価値についての説明が少ない、または、共感が生まれないことで、それが「消費者と生産者の間の壁」となってしまっているということだと思います。これから農業をやっていこうと思っている人や、農業を通して新しい価値を伝えていきたい人は意識的にバックグラウンドにある価値について、ていねいに発信していく必要があるようです。
また、もう1つ、映像内で「農と食のシステムは生産者と消費者の共同作業で創られる」といっているように、
消費者の立場の方は、従来の一般的な農業の特徴と限界について知ることや、新しい価値やシステムへの参加などが小さな農家が生き残っていくためには必要なので、
もし気に入った農家さんやサービスがあれば試しに利用してみることをオススメします。最近はポケマルのようなスマホでかんたんに農家とつながれるものもありますし、CSA(Community Supported Agriculture )という、生産者と消費者がリスクを分け合う産直システムなど、少し探すだけでも意外といろいろありますよ。
個人的には、一方向的な「売る・買う」の関係ではなくて、その先にある社会の課題について一緒になって取り組むような関係を作っていけたらといいなと思っています。