建築と庭―西沢文隆「実測図」集【書評】

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土木や建築、ランドスケープを学んでいた大学時代に影響された一冊。この本は、黒鉛色の濃淡によって建築と庭が造り出す日本特有の空間について描かれた実測図面集で、黒鉛色の濃淡によって木々の重なりや空間の透け具合、建築や自然の硬軟が表現されています。

建築家の西澤文隆さんは、日本の庭園は建築から独立して存在するものではないにも関わらず、一体として捉えて表現された図面がないと考え、自らの創作に活かす目的でその実測を始め、亡くなるまでの約20年間それは続きました。そして、その後、近しい方たちによって、説明文を極度に減らし視覚的に感得出来るような本として出版したいと考えていた彼の意思が引き継がれ出版にまで至りました。

 

西澤さんは、空間とは「頭で考える概念的なものではなく、切ったら血のでるみずみずしく受肉したもの」であり、実測とは「それをつくった人と直に差し向かっている状態」であるといいます。そうした伝統から創造への試みの中で、「庭と呼ばれない庭」という空間を見つけました。その説明には「自然の中に建築が作られた場合、自然は庭園化する…その過程」、「社寺配置民家配置…そこに生じてくる庭空間」、「群衆と自然や建築の間の相互呼応…その間に生じる庭」という短い補足と共に、春日大社摂社若宮神社、龍安寺、高山寺、修学院離宮の四カ所の図面が描かれています。

 

特に、春日大社摂社若宮神社の断面図からは匂い立つような美しさがあり、自然や地形に対する謙虚さが感じられ、木や土、石の質感を想像させるものです。この図面をどんなに見ても、実際に何かを造れるようにはならないし「庭と呼ばれない庭」を理解できるようになる訳ではありませんが、この1枚の図面に触れたとき、建築と庭、人と自然との関係の美しさとはこういうものなんだと深く植え付けられ、「庭と呼ばれない庭」という空間に憧れを持ちました。

 

農業という仕事をする上では作る側の勝手な思いではありますが、個人的に大事な考え方だと思っていますし、結果として食べて頂く方へと繋がったらいいなと思う、僕の出発点になっています。

建築と庭―西沢文隆「実測図」集